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法隆寺管長特別講演会&空如展

10月15日(土)、法隆寺管長の大野玄妙氏による特別講演会が大曲市民会館小ホールで行われました。

この特別講演会の開催には、仏画家・鈴木空如が模写した法隆寺金堂壁画十二面の存在が大きく影響しています。鈴木空如の生家は太田町小神成にあり、生家で保存されていた法隆寺金堂壁画十二面は平成9年に太田町に寄贈され、その後大仙市で引き継ぎ所蔵しています。この大仙市所蔵の法隆寺金堂壁画十二面がご縁となり、法隆寺管長である大野氏が、地方のしかも奈良から遠く離れた秋田に足を運び、講演してくださることとなりました。大野管長が秋田県内で講演されるのは初めてで、大変ありがたく貴重な講演会となりました。

また、法隆寺管長の来訪にあわせ、太田文化プラザを会場に10月7日から16日まで「空如の画業を探る」をテーマに作品展示が行われました。

第1展示会場には、法隆寺金堂壁画十二面が、内壁を再現するように展示されました。修復作業を終え12面がそろって展示されるのは7年ぶりとあり、会期中には1,351人の方が来場し、県内中からたくさんの来場者が、また県外からも遠くは札幌市や奈良市から来場された方もいらっしゃいました。img_5573

大きな壁画を一枚一枚、遠くから全景をみては、じっくりと近づいてみたりと、一度会場に入ると1時間は鑑賞を続ける愛好者ばかりでした。第2展示会場の関連作品は、空如の人となりがわかる資料が並び、こちらも食い入るように見入っていました。来場者は、「素晴らしい!」「入場料無料で本当にいいの?」「もっといろんなところで展示会をしてほしい」と様々な感想を述べながら会場を後にしていました。

会期中の15日(土)には、大野管長も展示会場を訪れてくださいました。img_5555

 

特別講演会は2部構成で行われ、第1講として法隆寺管長の大野玄妙氏が「日本のこころと和の文化」と題して講演してくださいました。img_0894img_0892

大野管長は、講演冒頭で、日本人はクリスマスの数日後には除夜の鐘を鳴らしお正月を悦び初詣をするなど、複数の宗教を容認している民族で、外国の方には理解しがたく変な民族に映っていると語りかけました。講演の中で、宗教や寺院の役割そして聖徳太子の『和の精神』を多くの文献から解説してくださいました。そして、この『和の精神』に基づき、多様な文化を受け入れながら発展してきたのが『和の文化』であると語りました。複数の宗教を容認できる日本人の民族性もなるほどと納得です。豊富な文献から私たちにもわかりやすい切り口でお話しいただき、大変貴重な講演となりました。

 

第2講は、東京芸術大学客員教授の有賀祥隆氏が「法隆寺の仏教美術について~鈴木空如の画業-法隆寺金堂壁画の模写を中心にして」と題して講演してくださいました。img_0915

有賀先生は、法隆寺金堂壁画保存活用委員会委員長であり、大仙市の鈴木空如資料調査専門指導委員を務めておられます。有賀先生は講演の中で、12面ある法隆寺金堂壁画を生涯で3度も模写した鈴木空如の体力と精神力は相当であったろうと評価しています。第1作は、明治39年頃から大正11年にかけて模写されたもので、箱根の吉池旅館に所蔵されています。第2作は昭和5年から昭和7年にかけて模写され、東京国立博物館に寄託されています。そして第3作が生家の鈴木泰三氏より寄贈され現在大仙市所蔵のもので、昭和7年から昭和11年にかけ模写されたものです。有賀先生は、大仙市所蔵の第3作が、最も仏画として見られることを意識して仕上げたものだと解説します。スライドで比較をしながら、壁画のありのままを模写する空如の技術を、第1作・第2作・第3作と細かく分析し解説してくださいました。講演により、空如の偉業について理解を深めることができました。img_0925img_0928

特別講演会は450人程が来場、大曲市民会館小ホールが満席となる講演会となりました。

大仙市内の方はもちろんですが、市外からの来場が約半分をしめ、大野管長のお話を聞きたいと奈良から来ていただいた方や有賀先生の教え子ですと仙台から来てくださった方など、興味関心の幅広さが伺えました。また、講演会の後に太田文化プラザの作品展に足を運んでくださった方もたくさんいらっしゃいました。

鈴木空如の偉大さを改めて感じた講演会と作品展示でした。これからも鈴木空如という偉人とその偉業から生まれた作品を、地域の宝として大事に保存していきたいですね。そして、大仙市民として、この偉大な先輩について理解を深め、正しい知識を広めていきたいと改めて感じました。

いつもより崇高な「文化の秋」となりました。

Posted under: 太田地域

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