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秋田県大仙市公式ブログ

太田町中里 薬師神社の「おにょ様」

こちらは太田町中里二十町の沿道に佇む薬師神社。
決して大きな神社ではありませんが、鳥居の横に飾られている真っ赤な「おにょ様」のお面が印象的な神社です。
「おにょ様」とは県南地区に数多くある道祖神の一種で、胴体に見立てた藁や岩などに、仁王様(お仁王様)のお面を被せ、交通の神や防塞の神として祀ってきた神体の呼称です。
この薬師神社のおにょ様も、かつては藁で作られた胴体があったそうですが、いつしか作られなくなり、今では残されたお面が地域の人々を見守っています。

さて先日、この薬師神社で秋田朝日放送の『ぷあぷあ金星』の番組収録が行われました。
ぷあぷあ金星、略して『ぷあ金』の呼び名で秋田県民に親しまれているこちらの番組は、ローカルタレントのバリトン伊藤さん、シャバ駄馬男さんが出演し、『気になること、やりたいこと』を県内各地で実践、発信し続けているバラエティー番組です。
今回は『県南地域の道祖神(おにょ様)を巡り、出演者がその似顔絵を描く』企画だそうで、数ある候補の中から大仙市では中仙地域と太田地域が選ばれ、太田地域では中里の「おにょ様」を取り上げていただけることになりました。
太田地域での番組収録は初めてとのことで、テレビ局の担当者とやり取りしたのをきっかけに、収録の現場に立ち合わせていただくことができました。

この日はバリトン伊藤さん、シャバ駄馬男さんのお二人に、同じくローカルタレントの石塚公評(いしづかこうへい)さんと、長年にわたってこの薬師神社の管理をされている佐藤春雄さんを加え、収録がスタート。
収録が始まったのは、日もだいぶ傾いた午後5時ころ。
春雄さんの案内のもと、おにょ様のお面とご対面です。

おにょ様を紹介しながら、春雄さんはこんな思い出話をされました。

春雄さんがまだ20歳くらいの頃、神社周辺のほ場を整備するため、ご神体を少し離れた古四王神社に動かしたことがありました。
当時、春雄さんの母は病床に伏していたそうですが、ある日その枕元におにょ様が立ち、元に立っていた場所へ帰りたいと訴える夢を見たのだそうです。
それを聞いた春雄さんのお父さんはただ事ではないと驚き、集落の人を集め、急いでご神体を元あった場所に戻したとのこと・・・

まだ若かった春雄さんは、人間の都合で神様を軽んずることの愚かさを痛感するとともに、即座に行動する父の力強さを頼もしく感じた体験として、忘れられない思い出になっているのだそうです。

続いて、神社の中へ。
この神社は、経年による老朽化が激しかったことから、春雄さんが資金をやりくりし、平成23年度に改修工事を行いました。
神社の中には、おにょ様がかつて胴体を持ち、集落で祀られていたことを裏付ける貴重な写真(昭和30年ころ撮影)もしっかり保管されていました。
写真を懐かしげに眺めながら当時のことを話す春雄さん、そして聞き入る皆さん。
春雄さんからひととおり話を聞いた後は、いよいよ似顔絵の作成に移ります。
お面の前に、出演者3人が並び、スケッチブック片手に似顔絵を描きあげていきます。

そして30分が経過。
完成した似顔絵は、カメラの前で一人ずつ春雄さんにお披露目されました。

どんな似顔絵が描かれたのかは、ぜひ番組内にてご覧いただきたいところですが、
忠実さを追求したものもあれば、歌が大好きだという春雄さんに寄せて描かれたもの、そして春雄さんが大ファンである北島三郎に寄せて描かれたものもあり、3人が全て違う観点でおにょ様の似顔絵を描きあげていました。

3人の描いた似顔絵に感動した春雄さんは、その場で大好きな北島三郎の「山」を熱唱し、収録の最後を飾りました。

収録を終えて、春雄さんは
「今年で85歳になった。それでもこうして元気で外に出て農業を続けられているのは、薬師神社の神様に見守られているからであるような気がする。なによりも、こうして人が来てくれること、自分が手をかけてきたものを話題にしてくれることが嬉しい」
と語っていました。

防塞の神として、地域に邪気が近寄らないように見守る「おにょ様」。
そのおにょ様が今こうして残っているのも、それを大切に見守る人がいたからこそ。

春雄さんが想いを込めて見守ってきた神社と「おにょ様」が、こうして話題になることを私も嬉しく感じながら現場を後にしました。

この収録の様子は、6月8日(金)24時15分から、秋田朝日放送で放送される予定です。
少し遅い時間帯ではありますが、是非ご覧ください!

Posted under: 太田地域

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