秋田の漬物といえば「いぶりがっこ」、テレビで地域の特産として取り上げられたり、グルメ番組でちょっとおしゃれに取り上げられたり、知名度も上がってきました。
ここで生まれた私たちにとっては、小さいころから慣れ親しんだおいしい漬物の一つです。
3世代同居の我が家でも「いぶりがっこ」は大人気です。直売所に行くと、試食もあり製造者一人ひとりの味の違いまで確かめて購入してくることができます。やはり作り手が見えた方が、安心でおいしいですよね。
太田には「いぶりがっこ」の作り手として頑張っている若者がいます。昨年から取材機会をうかがっていましたが、この度お邪魔してきました。
太田町国見の田口悦章(よしあき)さんは、5年前から大根の収穫からいぶし、漬け込み、販売まで行う「いぶりがっこ」製造を営んでいます。そもそも漬物はその家庭の味で保存食として食されていたものですから、漬物を事業化しようとしたのは、大きな決断だったと思います。
悦章さんは漬物を始める前、東京にいた時に手土産として「秋田の味だから」と、市販されている「いぶりがっこ」を買っていき、おいしくなかった体験があるそうです。仲間同士の語り草になるほど、イマイチであった味とその経験があったからこそ、何よりも「量より味」にこだわっているといいます。
悦章さんのいぶし小屋は、いぶし部屋が4つと物置1つが棟続きになっています。燻煙が窓からもれ、あたり一面いぶしのいい匂いが広がっています。「いぶりがっこ」製造は家族経営、繁忙期にはご近所の方にもお手伝いをいただき、あくまでも量産ではなくできる範囲で良いものを製造しています。
大根畑にも案内してもらいましたが、整然と並ぶ大根にびっくりです。悦章さんのお父さんも畑作農家で専門は「ネギ」です。大根の作付は、3反7畝ほどで、ネギの収穫後に種をまき、二毛作で大根を収穫しているそうです。機械を使用して土を掘り起し、掘られた大根を手で拾い上げて収穫します。いぶし小屋の1部屋に約千本の大根がつるされ、それが4部屋分、3日~4日程かけていぶす作業を1か月以上続けるそうなので、それに合わせての収穫は想像するだけでも大変です。
悦章さんも、製造工程の中で大根を収穫するときの負担が大きいと語っていました。
いぶし加減については、気温・気候、大根の太さ・つるし方、薪の乾き具合で火の位置や加減を調整する必要があるとのこと、納得のいくいぶし方ができるようになるまで3年かかったそうです。薪は広葉樹を使用しており、最初はナラの木で強めにいぶし、サクラで仕上げてコーティングをするそうです。取材時はいぶして1日の時。大根の表面がうっすらと茶色になっています。