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秋田県大仙市公式ブログ

太田の「家庭教育学級」

太田ではおなじみの「家庭教育学級」、私は太田出身ではないため実はなじみのない言葉でした。現在大仙市内を見渡しても教育委員会が主催となり開催されている「家庭教育学級」は、この太田の取り組みのみです。
「家庭教育学級」は、保護者が家庭教育の重要性を認識し、自らの役割や責任を自覚するよう、教育行政において保護者の家庭教育を支援するとともに学校や地域と連携して家庭教育を充実させる方策として、昭和39年頃から全国で開設が相次ぎました。太田では昭和39年に県内でもさきがけ的に「家庭教育学級」を開設、昭和50年には幼稚園児を持つ保護者を対象とした「家庭教育学級」が開設され、以来、家庭の教育力向上をめざし長きにわたり継続して事業が続けられています。

今年度は、おおたわんぱくランドの保育参観日に合わせて全3回講座が開催され、4月は幼児教育カウンセラーの坂本昌さんの子育て講話、7月に音楽教室の佐藤香純さんの「リトミック」、そして最終回の1月には、大森山動物園の園長小松守さんの子育て講話が行われました。
かねてより聞きたいと思っていた小松園長の講話、取材というより勉強のつもりで聞いてきました。小松園長の講話は「動物の子育てに教育の原点を探る」というものでした。

小松園長は、太田は自然が多く、農業が盛んで同居世帯が多い、スーパー・園・病院・老人ホーム・郵便局などが一カ所に集約されコンパクトにまとまっており、子育て環境としてとても良いと認めてくださいました。ご自身の息子さんと大台スキー場にも来ていたとお話しされ、とても親近感がわきます。
大学卒業後から大森山動物園に勤務され、動物園勤務は43年にも及ぶそうです。動物園は「文化資産」だと考えているとお話しされました。動物に言葉は伝わらなくても気持ちは伝わる、自分の気持ちを伝えることで動物と心が通った気持ちになる、心が通う体験が心を豊かにするということから、「動物と語らう森」とキャッチフレーズを掲げているそうです。自然や動物との関わりを大事にして欲しい、子どもの気持ちが育ってくると語ります。冬期間、大森山動物園は土日のみ開園、「冬の動物園」として営業しています。冬ならではの動物の様子が見られるそうです。

43年の動物園生活の中で、動物の子育てそして人の子育てにも関心を寄せてきたという小松園長、子育てとは①「いのち」をつなぐ営みであり、種を超えた普遍的なものである②親と子のつながりの中で行われる、自然がつくった巧妙な仕掛け(絆)である③子どもの「豊かなこころ」を育む教育の原点であると語りました。わかるような、ちょっと難しいようなと思って聞いていましたが、動物園での実際のエピソードを紹介されるとなるほどと納得。一つ目のエピソードは、小松園長が飼育員として勤務されていた時のこと、母親に育児放棄されたチンパンジーの赤ちゃん「しのぶちゃん」がいたそうです。母親に替わり飼育員が毎日時間を決めて抱っこをしながらミルクをあげ、さみしくないように人形をそばにおいたりと工夫をしながら育てていました。少し大きくなると、ミルクを飲んだ後も抱っこをせがむようになったそうですが、他の動物の飼育もあることからお世話が終わるとすぐに離れるしかなかったそうです。そうして体は大きくなった「しのぶちゃん」ですが、大きな音が苦手だったり、同じくらい年のチンパンジーにもおびえ仲良くできなかったりというのがあり、3歳になる前に亡くなってしまいました。小松園長は、「しのぶちゃん」の悲劇から「からだの栄養だけでは育たない。心の栄養も必要だ」ということに気づいたそうです。
そしてもう一つのエピソードも披露。育児放棄されて飼育員に育てられた虎のミドリ、ミドリが産んだ子「ラン」もまた育児放棄されました。母親に育てられた経験のないミドリは、子育てということを知らないため育児を放棄しました。小松園長は「ラン」もまた育児放棄をする母親にならないよう、動物園に住み着いたお腹の大きい野良犬・ノラに子育てをしてもらおう考えたそうです。ちょうどノラが赤ちゃんを産んだ次の日、「ラン」が産まれました。ノラは、自分の子と同じように虎の子「ラン」をなめてあげ、お乳を飲ませ、時には叱り3ヶ月ほど一緒にいたそうです。ノラが「ラン」にしたことは、一緒にいて「ふれあって」あげたことだけ、けんめいにふれあい育てることで母の愛を伝えました。そして、「ラン」は大きくなり自分も母親になりました。1度目2度目の出産時「ラン」は育児を放棄しましたが、3度目の出産時「ラン」は自分の子どもを育てたそうです。聞いた瞬間に、自らの子育てを振り返ってしまいました。まだ間に合うなら、できるだけ子どもにふれあって親である姿を見せなきゃと強く感じます。
小松園長が講話の中で繰り返し語ってくれた言葉に「絆」があります。親と子の絆は、「親の愛」と「子の求め」の両者でつくるものだそうです。「親の愛」を伝えていくことが「いのち」を伝えていくこと、動物の子育てのエピソードで、理論と現実が結びつき、ズシンと響きました。動物の子育てと人間の子育てはイコールではないけれど、動物の子育てで「いのち」をつないでいくためになくさないようにしている大事なことを、人間の子育てでも忘れてはいけないとお話されました。
最後は、保護者の皆さん・園の先生達にむけて、幼児教育の大事な時期で、今が大変な時期ですが楽しみの多い時期でもあります。子育てを楽しみながら頑張ってほしいと締めくくりました。

小松園長、貴重なお話をありがとうございました。
「家庭教育学級」に、まさしくふさわしい講話でした。
子育てにマニュアルはない、と小松園長もおしゃっています。だからこそ、このような機会があって、いろんな視点から子育てについて考えるきっかけがあれば、心が変わったり視点が変わったりする気がします。
そう言えば、今回気づきましたが、太田の保育参観はお父さん出席率が高い!子育てに対する意識の高さはもしかしたら、長く続く、太田の「家庭教育学級」の成果なのかもしれませんね♪

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