新規就農者研修施設の冬(1月)

 今冬、日本海側は大雪との予報がありましたが、年末年始、そして1月20日の大寒(万物を凍らせるほど厳しい寒さを迎えるので大寒と言うとか)以降も穏やかな天候で、過ごしやすい日が続きました。

 そして2月3日の立春過ぎ、日本海側に今季一番の強い寒波が襲来。幸い研修施設には寒波の影響が無く、ハウス内でシュンギクやコマツナなどの葉物野菜や花が順調に生育しています。

ハウス内で研修生がコマツナを収穫している様子ハウス内で研修生がコマツナを収穫している様子ハウス内で研修生がコマツナを収穫している様子ラナンキュラスの管理をしている様子

1月9日 

JA秋田おばこソラマメ部会の研修会

 ソラマメは、空に向かって「さや」が付くため「空豆」と名前がついたと言われています。冷涼な気候を好み、かなりの低温に耐えられることから、北国に向いた作物でもあります。

 研修施設では、4月1日に新年度の研修がスタートし、最初にソラマメを定植するのが習わしになっています。またソラマメは、6月半ばから収穫して初夏に収入を得ることが出来ます。

 JA秋田おばこでは、ソラマメの需要期である父の日(今年は6月15日)に合わせた出荷を目指しており、2月20日には種を蒔き、3月20日には定植を推奨すると説明がありました。ソラマメは、発芽した種子を発砲スチロール箱に入れ、25日間ほど雪中に埋めて強制的に低温にさらす低温処理をする栽培方法を多くの農家が取り入れています。低温処理によって開花が早まり、花付きも良くなり、また収穫開始を3~5日程度前進させることが出来ます。

栽培講習会の様子

座学による栽培講習会の様子座学による栽培講習会の様子座学による栽培講習会の様子栽培講習会の資料

1月14日 農業基礎講座(1)

水稲栽培について

 14日から2月25日までの毎週火曜日午後は、研修生のほか一般参加者も対象にした農業基礎講座を開催。

 第1回目は仙北地域振興局農業振興普及課の職員を講師に水稲栽培について。

 東北農政局は秋田県南地域の作況指数(令和6年10月25日現在)は「103」のやや良と公表しました。しかし7月下旬の大雨の影響で茎が長く伸び、倒伏が多く見られたこと、倒伏すると稲穂の熟し具合が低下し、米粒が小粒傾向にあったこと等から、やや良と感じた農家は少なかったようだとのこと。

 令和6年産のコメ市場は高値で動いており、農家所得は上昇すると見込まれ、数年は高値で推移か?市場は「生き物」であり、将来のコメ価格は読めない。また、国のコメ政策は突然発表されることがあり、農家が戸惑うが、どのような政策が出てきても大事なことは「基本的な技術をおさえ、しっかりコメを作って、収量確保に努めること」だと強調されました。

水稲栽培の講座の様子

水稲栽培講座で講師が説明している様子水稲栽培講座で講師が説明している様子真剣に水稲栽培講座を受ける研修生の様子真剣に水稲栽培講座を受ける研修生の様子

1月16日、24日

仙北地域振興局主催の若手農業者経営力ステップアップ研修会に参加

 中小企業診断士を講師に、青色申告書を活用した経営分析の方法について。

 農業に限らず事業を営む経営体は、法人と個人の2種類に区分されます。法人の財務諸表は、「損益計算書」「貸借対照表」などで構成され、経営成績を明らかにするために作成します。損益計算書は「生産のための費用(生産費)」と「販売・管理等のための費用(販管費)」などが集計されるような様式になっており、「どこにどのくらいの費用がかかっているか」を把握できます。

 個人事業者の青色申告決算書は、所得税の申告のための計算書類で、法人の財務諸表とは異なる様式になっており、生産費、販管費などが区分されません。「どこにどのくらいの経費がかかっているのか」が把握できないため、青色申告決算書の数字を財務諸表の様式に組み換えて、経営分析のための「経費の整理」を2回に分けて学びました。

研修会の様子

指導を受けながらパソコンを操作する研修生の様子研修資料

1月21日 農業基礎講座(2)

株式会社秋田クボタの協力を得て、農業用ドローンについて

 2010年にフランスのParrot社が「AR.Drone」を発売したのがドローン普及の始まりとされ、報道、災害、建設、測量、運搬、設備の点検、そして農業と活用がどんどん広がってきています。

 農業用ドローンは今のところ農薬や肥料散布が主ですが、今後は直播(種子を空中から蒔く)や散布作業しながら空撮して作物の生育状態などの管理データを収集するための活用など多角的な活用が期待されています。

 農業用ドローンの特徴として、

  1. 準備、作業時間を大幅に短縮
  2. 適期防除が可能
  3. 遠隔操作のため操作する人への農薬飛散を防ぐことが出来る

 またドローンには航空法と電波法の2つの法律が関わり、誰でも、どこでもドローンを飛ばせる訳ではなく、飛行禁止エリアがあることや飛行操作には資格が必要。免許制度はないが、国土交通省の指定教習施設として認定を受けた施設で実技と座学を学び、試験に合格した方がオペレータとして認定され、ドローン操作が出来る。

 具体的には、農業用ドローンを購入すると、

  1. 指定教習施設でのドローンの教習受講
  2. 国(国土交通省)へのドローンの登録
  3. 年1回、ドローンの定期点検が必要

 現状の法律では、ドローン操作の資格は機体と結び付けて国へ登録することから、登録されていない機体を操作することは禁止されていること。また、農薬散布をする際は事前に国へ届け出が必要。国へ届けた農薬散布計画は、誰でも確認することが出来るため、万が一、届け出が無いのにドローンを飛ばしていることが発覚すると50万円以下の罰金の対象となること。法律で決められたことは遵守し、農業用ドローンを活用してくださいと説明がありました。

 座学の後にドローンの現物を見ながら仕組みやドローンの回転方向の原理、飛行の原理などの説明を受け、また今のところバッテリーは10分程度しか持たず、1時間操作するにはバッテリー6個(1個25万円ほど)必要なことなどの情報提供がありました。 

ドローン講習会の様子

座学によるドローン講習会で講師が説明している様子座学によるドローン講習会でリモコンを手にする研修生実物のドローンを見ている様子ドローンの重さを確認している様子

1月28日  農業基礎講座(3)

仙北地域振興局農業振興普及課職員を講師に花き栽培について

 「花き」とは、「鑑賞の用に供される植物をいう」と定義されており、具体的には「切り花」「鉢もの類」「花木類」「球根類」「花壇用苗もの類」「芝類」「地被植物類」に分類される。

 また、花きの県別産出額(令和4年)ではトップが愛知県で594億円、千葉県(246億円)、福岡県(227億円)。秋田県は22億円でキク、リンドウ、トルコギキョウの3品目で75%を占めている。

 花き生産の課題は、

  1. 市場ニーズ(需要期が正月、春彼岸卒業式、母の日、盆、秋彼岸、ブライダルシーズン等)に収穫期をあわせる計画生産が求められる
  2. 気候変動の影響が大きく、過去の経験値に基づく予測が困難になり、需要期とのズレが頻発している
  3. 需要と供給のミスマッチにより単価下落による収益の低下や余剰花きの廃棄が増加しているなどが説明されました。

 次に、トルコギキョウと小ギクの栽培の方法について詳しい説明があり、花に限ったことではないが、出荷調整は最も時間のかかる作業で、出荷調整作業の省力化が最大のポイント、花き生産者もどんどん減ってきているので、花き栽培にも取り組んで欲しいと話されました。

花き栽培講習会の様子

座学による花き栽培講習会の様子座学による花き栽培講習会で講師が説明している花き栽培講習会の資料を読み込む研修生花き栽培講習会の様子

1月29日、30日

農業所得の申告に向けたパソコン簿記の研修

 昨年度まで当施設の農業技術指導員だった木村先生を講師に、農業所得の申告に向けたパソコン簿記の研修。

 研修に入る前に木村先生から「生産性が低い時期の簿記記帳の見直しや申告も、農作業の一つ。今やパソコンは農業機械、農業機械を操作する感覚でパソコン簿記や電子申告に向かって欲しい」と話がありました。

 研修生全員が農業簿記3級を取得していることから、簿記記帳の用語の意味や科目仕分け等はすでに理解しており、練習問題はスムーズに解けていたようです。

 2月にも2日間の研修を予定しており、その際には、研修生が受給している研修奨励金(雑所得に該当する)について、電子申告する方法を学ぶこととしています。

パソコン簿記研修会の様子

パソコン簿記研修会で講師が説明している様子スクリーンに映る資料を説明する講師真剣にパソコンを操作する研修生パソコン簿記研修会の様子

1月31日

ラナンキュラス農家の視察

 県雄勝地域振興局と仙北地域振興局の協力を得て、JAうご管内の農家へラナンキュラスの視察。

 視察先の大坂さんは、水稲と夏から秋はトルコギキョウ、冬季はラナンキュラスの組み合わせで、年間を通じたハウスの利用効率を高めていました。東北でも指折りのラナンキュラスの栽培農家ですが、「ラナンキュラスに取り組んで15~6年になるが、未だに失敗の連続。ラナンキュラスの球根は高価で入手が不安定で、しかも腐植しやすく、株養成が重要になる。定植前に必要な球根の冷蔵、芽出し処理も自分で行っているが、他の作業と重なるなどして、なかなか満足のいくような花を咲かすことが出来ない」とのこと。また「毎回、土壌分析を行っている。ハウス内は5度に温度管理をしているが、場所によって温度が微妙に異なるので、加減が難しい。何年か植えて、良くない品種は思い切って廃棄し、新しい品種に更新することも大切かな。そのときどきの環境で、最大限の光合成をさせるために冬でも天気が良い日はハウス横幕の開閉を行って蒸散を良くし、枯葉取りが毎日の仕事」とも。

 ハウスは、入った途端に一種のオーラが感じられ、きれいに生育が揃ったラナンキュラスから、日々の細やかな作業ぶりが伺えました。

視察の様子

ハウス内で真剣にメモを取る研修生ハウス内で栽培されている花を観察する研修生ハウス内で栽培されている花の状況を確認する研修生ハウス内での視察の様子

12月の研修活動報告はこちらをご覧ください。

  • 新規就農者研修施設の冬(12月)- 大仙市農業振興情報センター

https://www.city.daisen.lg.jp/archive/p20250108154402