新規就農者研修施設の冬(3月)- 大仙市農業振興情報センター
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新規就農者研修施設の冬(3月)
今冬は大雪の予報でしたが、市建設部調べによる累積降雪量が市内8地域の観測点で450センチ前後。過去の降雪データを見ると、大雪だった平成29年は900センチ前後、令和3年は800センチ前後となっており、今冬はほどほどの降雪量となった感じです。
しかし3月下旬から寒い日が続き、4月に入って雨の日も多く、春らしいぽかぽか天気となりません。研修ほ場の土がなかなか乾かないために、作物を植える畝(うね)を立てることが出来ず、作業が遅れぎみ。
農家にとって望ましい天候は「五風十雨」(5日に1度の風と10日に1度の雨)と言われています。今年1年、農家にとってコメも園芸作物も豊作となるような天候であることを願うばかりです。
3月4日
きょうわ道の駅の農産物直売所に出荷している協議会の皆さん20人ほどの方々が、東部研修施設を視察のために来所。
大仙市の野菜や花きなどの園芸作物生産は、地域特性があります。
例えば大仙市東部(中仙、仙北、太田)ではトマト、エダマメ、アスパラ、花き等の産地となっており、西部(神岡、南外、西仙北、協和)では少量多品目の傾向があります。
この日は、研修生が「ソラマメ」の催芽(芽が出やすくなるように処理する)作業を行っており、協和地域ではソラマメの栽培がほとんど行われていないため、協議会の皆さんは、興味深く見ていました。
(視察の写真を撮らないでしまいました。写真はソラマメの催芽作業です)
ソラマメの催芽作業の様子
3月7日
太田地域の農事組合法人新興エコファームの方々が西部研修施設を視察のために来所。
西部研修施設では、夏場にボックス(箱)でトマトの養液栽培しているハウスの後利用にアスパラ菜を栽培。また、西部は東部研修施設に比べて施設規模が約1/4のため、露地、ハウスを切れ目なく活用して研修効果を高めています。
法人の細川代表から「こうして見て、話を聞くことは、作物が違っても何かしら応用できるヒントがある。さすが研修施設、年間の作付け計画や冬場のハウス利用等、さまざまな工夫がされており、たいへん参考になった」と礼の言葉がありました。
視察の様子
3月11日
大仙市農業研修会の参加
研修会に先立ち、この3月末に新規就農者研修を終える2年目研修生4人の成果発表があり、約100名の研修会参加者を前に、研修成果と就農に向けたそれぞれの想いを伝えました。
研修生の晴れの舞台、発表の主旨は次のとおり。
- 我が家は、以前は水稲農家だったが、現在は近くの農業法人に農地を貸している。関東や仙台で会社勤めをしていたが、自分の生まれ育った故郷で子どもを育てたいと思い帰郷。故郷で暮らすうちに食料を生産する農業に取り組みたいという思いがつのり研修施設に入所し、農業を一から学んだ。研修では、作物の栽培技術だけではなく、場外研修や視察などもサポートしてもらい、2年間で学び得たことは大きかった。就農後は、基本に徹して、より良い作物を出荷できるよう努力したい。
- 小さいころから自宅の農業を手伝い、将来は農業を生業にしたいと考えていた。高校卒業後に就農することも考えたが、農業はいつでも出来ると思い進学し、大学卒業後は興味があった環境分野の仕事に就いた。関東や関西等(会社の異動)で15年勤め、親の年齢と基盤整備により生産環境が良くなることなどを考慮し、Uターンして農業研修を受けた。私は親から「自分のやりたいことをやりなさい。農業を継ぐ必要はない、会社勤めの方が良い」と言われてきた。これは、農業の労働環境が厳しく、収益を出しにくい職種のため、子どもに苦労させたくないという親心から。私は自分の子どもにも農業を勧められる、農業を職業として選択してくれるような営農を目指し、農業の魅力を高めていきたい。
- 2年間の研修で得た知識や経験は、農業への理解が深まると同時に、自分自身が農業でどのように貢献できるかを考えるきっかけになった。食の安全や地産地消の重要性が高まっている中で、まずは基本に徹して良い野菜を作り、やがては農業を通して地域の活性化に貢献したい。
- 私は非農家出身だが、子どものころから農業機械が好きで、いずれは農業に関わっていきたいと思っていた。友達の祖父が働いている農業法人で手伝いをしているうちに、生業としての農業に興味を持ち始め、自宅すぐ近くに西部研修施設があるとの紹介もあり、入所して農業の知識を身につけようと思った。研修では、実践的な栽培技術や座学を通して多くのことを学ぶことが出来た。4月から地元の農業法人に就農する。農業法人は研修施設に比べ栽培面積が格段に大きく、自分の役割も大きいと思うが、就農先の期待に応えられるよう、研修で学んだ知識や経験を活かし、効率の良い丁寧な作業を心かけていきたい。
研修生の成果発表後には「第17回大仙農業元気賞」の表彰式があり、大曲、中仙、太田地域の若手農業者3人が表彰を受けました。今回で農業元気賞の受賞者は56人、うち中仙地域から最も多い13人、次いで太田地域12人。また、新規就農者研修施設の修了生はこれまで10人が受賞しています。
今回、成果発表した研修生も、やがては「大仙農業元気賞」の受賞者となり、再び同じ晴れ舞台に登壇してもらいたいと願います。
研修成果発表会の様子
3月14日
秋田市の市場関係者を講師に、作物を買う側の話を聞くマーケティング研修。
主な内容は次のとおり。
- 作物の出荷先は(1)JA出荷、(2)市場出荷、(3)直売所、(4)生協等への販売、(5)消費者への直接販売、そして(6)ネット販売と大きく6通りあり、それぞれメリット、デメリットがある。
- 例えばJA出荷であれば、自分で面倒な手配等はしなくてよいが各種手数料、経費がかかる。直売所は自分で決めた価格で販売出来るが、多量の販売は難しく、自分で納品して売れ残りも自分で処理しなければならない。ネット販売は、作物にこだわったり、思いをのせたり、物語性を売りにしたり出来るが、品質、味、価格が伴わないとリピートは難しく、荷造り、出荷、クレーム処理、債権(売上代金や未収代金)管理等を全て自分で対応しなければならないなど。
- 農家が減少し、比例して耕している農地も減って、市場で扱う作物が減少してきている。農業法人が増えてきているが、細かいもの(手がかかる作物)が作れなくなっている(裏を返せば、個人農家にとってはチャンス)。
- 「量は力、品質は信頼」と言われてきた。出荷期間を長く持つことが大事。いろんな品目で出荷期間を長く持つのも良い。品目が代わっても、買う側とのつきあいがつながるような関係が大事で、これが次年度につながる。
- 良い作物を作っている農家の真似をすること。近くに同じ品目を栽培している農家とは密に情報交換する。話を聞くだけで実行しないのはダメ。
- 良いもの(A品)と悪いもの(B品)を必ず分けて出荷なり販売なりすること。混ぜて出すと、自分の評価(良くない評価)につながってしまう。
秋田県人は、農作物に限らず良いものを作っても売り方やPRが下手だと言われています。研修生は、販売手法や出荷先ごとのメリット、デメリットを学び、自分の作った作物をいかに売るか、研修中から考える機会となりました。
マーケティング研修を受けている様子
3月19日 県農業公社の今年度2回目の面談
県農業公社の今年度2回目の面談
1年目研修生には初年度の研修を終えての感想や成果を、2年目研修生には就農するにあたっての決意や準備状況などの聞き取りと確認がありました。2年目研修生には、就農後の農業公社への各種届出や書類提出の説明と、取り組む作物のアドバイスも。
独立営農する研修生は、条件を満たせば就農後も3年間、国から支援金を受給することが出来ます。3年間のうちに営農を確立し、5年後には就農するために立てた営農計画の所得目標の達成を目指します。
公社の担当職員から、「作物の出荷量や販売金額など営農計画どおりにいかない場合が多いが、目標に向かって頑張って」とエールの言葉が送られました。
面談の様子
3月21日
中仙支所の新規認定就農者審査会
今回は、東部研修施設の研修生2人が審査会に臨みました。
審査会の開会にあたり、審査会長である中仙支所農林建設課長から「中仙地域は、農業元気賞の受賞者数に表れているとおり、市内トップクラスの農業が盛んなところ。若い農業者も頑張っているし、若手農業者を支えるベテラン農家も多くいる。就農後は周囲の協力も得ながら、中仙農業の担い手として頑張って欲しい」とあいさつがありました。
審査会では、就農を目指したいきさつや営農計画、将来展望などについて問われ、無事、「認定新規就農者」として認められました。
審査会の様子
3月27日
ヒマワリの播種
新規就農者研修は、年度区切りと同じ4月に始まり3月に修了しますが、出荷時期を考慮した栽培研修はエンドレス(終わりがなく続く)です。6月下旬に出荷するソラマメは2月に種を播き、また6月の父の日あたりに需要のある黄色い花の代表・ヒマワリは3月下旬に種を播きます。
1年目研修生が2年目にヒマワリの栽培研修を希望してハウス内にほ場の準備を進めてきましたが、この日、ヒマワリの種を播きました。ヒマワリは、畑で青空に向かって花開くイメージがありますが、雪国では6月出荷に向けてハウス内で栽培します。
種を蒔いている様子
3月31日
令和6年度新規就農者育成研修修了式
2年間の研修を終えて、4月から東部研修施設の3人が独立営農、西部研修施設の1人が法人就農します。
所長から修了生4人それぞれの思い出が語られ、はなむけとして江戸時代の農学者(のちに東京農業大学初代学長)横井時敬(ときよし)の「土に立つものは倒れず」の言葉が贈られ、「転んでも必ず立ち上がって、土を踏みしめて欲しい」と激励されました。
指導員の先生方からは、
- 研修期間の2年とも夏がものすごく暑く、作物の栽培に苦労した。地球温暖化の進行で、夏は毎年暑いことが予想される。人は暑ければ水を飲むことが出来るが、作物は自分で水を飲むことが出来ないので、特に夏場の潅水はしっかり行って欲しい。研修施設でうまく作物を育てることが出来ても、自分のほ場でとなると思うとおりにいかない場合が多いが、諦めずに継続して作物を育てて欲しい。作物を育てることで1回ごとに栽培技術が向上し、安定的に生産出来るようになる。
- 就農すれば、営農計画に表れていない多くの想定外のことが出てくると思うが、まずは営農計画に極力近くなるように努力して欲しい。営農計画はあくまで計画ではあるが、計画を超える農業を目指して欲しい。
- 皆さんには、やり方次第ではあるが明るい未来がある。決して諦めないこと。諦めずに続けていくことで、自分の目指す農業が見えてくる。
と、諦めないこと、継続すること、努力することの大切さを強調した激励の言葉が伝えられました。
修了式の様子
2月の研修活動報告はこちらをご覧ください。
- 新規就農者研修施設の冬(2月)- 大仙市農業振興情報センター