新規就農者研修施設の秋(令和7年度9月)- 大仙市農業振興情報センター
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新規就農者研修施設の秋(令和7年度9月)
今年の秋は比較的良い天気が続き、稲刈り作業が順調に行われました。
近年の異常気象による収量の低下に加え、コメの生産コスト増や需要増などの要因によりコメの価格高騰となりました。
今年は、昨年の生産量不足を受けて作付面積を増やした農家がたくさんいるようです。
研修生も、研修施設での研修の傍らで自宅の稲刈りを手伝い、家族で収穫の喜びを味わったようです。
東部新規就農者研修施設の様子




西部新規就農者研修施設の様子


9月4日
太田中学校の2年生2名がインターシップに東部新規就農者研修施設を訪れました。
施設見学を行った後、果樹の指導員の指示のもと研修生と共に、りんごの木の摘葉(果実周辺の日陰を作る葉を取り除き、果実への日光を増やすことで着色を良くする作業)を行いました。また、初めての作業に戸惑いを見せる中学生に、研修生は摘み取り方法のアドバイスをしました。
この日は、りんごの摘葉作業のほかにも糖度計(手持屈折計)を使用した巨峰の糖度検査を行いました。計測面にぶどうの果汁を垂らして計測します。液体に含まれる固形物の濃度が高いほど光の屈折率が高くなるため、この屈折率の変化を測定することで、液体の糖度を把握することできます。
巨峰の収穫に適した糖度は18%ですが、計測時は15%。計測後に1粒食べ「ちょっと酸味があるけどおいしい」と数値を実感していました。
インターシップの様子




9月5日
当研修施設では、農家や施設の見学を希望する研修生に対し場外研修を行っています。
この日は、りんどうで就農予定の研修生が、由利地域振興局の協力のもと由利本荘市の鳥海地域で栽培されている「秋田鳥海りんどう」農家の視察を行いました。
「秋田鳥海りんどう」は平成16年に鳥海山麓の冷涼な気象条件を活かすことのできる作目として「7月のこの地域にりんどうはどうだろうか?」という農家の声により栽培が始まりました。
現在、40戸の生産者が栽培を行っており、県内の市場のほかに兵庫県や北海道などにも出荷しています。
今回、2か所の農家のほ場や作業施設を見学。1か所目は家族で40aの面積を栽培し、葉を取る作業や結束する作業などの出荷調整を全て手作業で行っていました。
2か所目の農家は60aの面積を栽培し、調整作業はフラワーバインダーという葉切から結束まで行ってくれる機材を使用し作業の効率化を図っていました。
見学させていただいた農家はどちらも、「面積の拡大は1度収穫を体験してからにした方がいい。一度も収穫せずに新しいりんどうを定植しても手がまわらない。結果的にりんどうが病気になり台無しにしてしまう可能性が高い。作業効率をよく考えることが重要だ」と話していました。
視察研修の様子




9月9日
東部新規就農者研修施設では、花や野菜のほかに果樹の栽培も行っています。
春から誘引や消毒、摘果作業を行ってきたぶどうの収穫が始まりました。
東部研修施設では、複数の品種のぶどうが栽培されていますが、この日は巨峰の収穫を行いました。
巨峰は、糖度が18度以上であることや表面(果皮)の色が黒くなっていることが収穫の目安となります。事前に1房の糖度を計り18度以上の糖度を確認したうえで、周辺の巨峰から収穫していきます。
研修生は巨峰を覆っている白い袋の間から巨峰の色を確認し、ひとつひとつ丁寧に収穫をしていました。
その後、重さを計り、出荷準備を行っていきます。
巨峰の収穫・出荷準備の様子



9月11日
この日は場外研修で、秋田市公設地方卸売市場内にある秋田中央青果株式会社を訪問し、流通について学びました。
市場内の見学後、秋田中央青果株式会社の渋谷会長より講話をしていただきました。
渋谷会長は、
- 市場独自の取り組みとしては、市場は土日の開放はされていないが、場合によってはその時に収穫しないと作物が台無しになることから個別に相談に応じている。農家の品物があって、それを流通するための手伝いをしている。そのため、市場の職員も取引先の農家の現場に行き、作物の生育状況を把握するように努めている。そういう取り組みを行っているので、取引先の買い手を利用してほしい。
- 農業ほど難しい仕事はなく、哲学である。365日同じ日がない。ただ植えれば育つわけでもない。毎日作物の生育状況が変化しているため毎日やる仕事が違う。決まった仕事がないので、毎日畑に行かなければならない。
- 野菜、果物など、人の口に入れる物を作っている人たちがいなくなると日本は潰れる。作る人がいなくなった場合のことを消費者の方は考えていただきたい。
- 県の農業関係団体の会議に度々出席させていただいているが、高収益作物が話題になる。正直なところ時期によって価格が変動するので高収益作物はない。近年の温暖化に伴い体感温度も変化し食べる時期が変わってきている。例えば、残暑が続いて鍋ものを食べる時期が遅くなってきている。いつも価格が高いとは限らないので、収穫する時期を分けるよう作物を育てるといったようにリスク分散をする必要がある。
- 市場が求めている作物は普段みなさんがあたりまえに食べている野菜、果物です。そして季節に応じた旬な野菜です。何かに特化した作物でも売り先はありません。ねぎ、アスパラ、ホウレン草といった普段食べている野菜は一番売れる野菜で求められているもの。
と話してくださいました。
秋田中央青果株式会社の視察の様子






午後には秋田テルサで行われた株式会社かねひろ主催の「KANEHIRO PACKAGE EXPO MAKE 2025(カネヒロパッケージエキスポメイク2025)」に参加し、パッケージ等の資材について学びました。
さまざまな資材メーカーや機器メーカーが一堂に会し、初めて見る機材に興味津々でした。
農業分野の資材もたくさんあり、重ねても嵩張りにくいものから袋のまま電子レンジで調理することができる資材までたくさんの種類の資材が展示されており、研修生は直売所等に販売する際の見え方などを考えながら実際に手に取り、熱心にメーカーの方の説明を聞いていました。
また、使い捨てのゴム手袋等も紹介されていて、サンプルをいただき手にはめてみると「現在使用しているものよりも頑丈だし良く伸びる。こういうのが欲しい」と実感していました。
資材等の見学の様子




9月24日
春には長雨によりなかなか定植ができず、夏には酷暑、その後の豪雨にさらされた夏秋ネギもようやく収穫の時期を迎えました。
先日のJA秋田おばこねぎ部会主催による目揃い会では、JAネギ担当者より「今年の夏秋ネギは、7月の高温や干ばつ、8月の多雨により生育の遅れや軟腐病(地際部から葉が水浸状に腐り、軟化・腐敗していく病気)の多発、白い部分が短いものが多い」と説明がありました。
収穫後のネギは水分を多く含んでおり、そのままにしておくと傷みやすいため、葉先を切り、風通しのいい場所でさかさまにしておく必要があります。
ネギは、皮むきや根切り、長さ調節など出荷調整がとても大変な作物なため、人手が必要となります。一般のネギ農家は出荷時期のピークを迎えると、夜遅くまで調整作業をする農家もいます。
この日は研修生みんなで役割分担をしながら出荷調整を行っていました。
ネギの収穫・出荷準備の様子






9月25日
当研修施設では食育を目的とした地元の保育園や小中学校の収穫体験の受け入れを行っています。
この日は地元の小学校1年生が東部研修施設を訪れ、ぶどう(スチューベン)の収穫体験を行いました。
研修生の手を借りながら、ハサミを使って大きなぶどうを収穫していました。
収穫をした児童は、「おうちに帰って家族とたべる」ととてもうれしそうにしていました。
最後に、対応した研修施設職員は、「大きくなって農業をやりたいと思ったときは、ここに農業の勉強ができる施設があるということを思い出してほしい」と伝えました。未来の担い手確保につながればと思います。
ぶどうの収穫体験の様子




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