新規就農者研修施設の春……5月編

 五月晴れの日、東部研修施設のほ場から南西方向に残雪の鳥海山がとても美しく見え、思わず……♪(音符)秀麗無比なぁ~る 鳥海山よ~ と秋田県民歌を口ずさんでしまいます。

五月晴れの大空と、遠くに見える残雪の鳥海山
東部研修施設のほ場から望む、残雪で白く染まった鳥海山と青空

 東部研修施設がある太田地域は、秋田県民歌作詞者・倉田政嗣の出身地。そして政嗣の家は、東部研修施設から南に数十メートルの羽後信用金庫太田支店周辺、豪農で造り酒屋を営んでいました。

 平成31年4月に100歳で亡くなった政嗣の長女・政子さんの手記に

「青い田の小径にたたずみ、『どこまでが家の田んぼ?』ときくと、『ずっと見えるとこ全部』という笑顔の父の言葉が返ってきて、なんだか頼もしく感じました。

青き田に境界問えば見の限りと笑ましい父との遠きひとこま」

とあり、東部研修施設の研修ほ場の一部も、政嗣家の農地だったのではないかと推測されます。

 さて、4月に続き5月も好天が続き、田植え作業がはかどりました。農家の方々は、今年の米価がとても気になっていることと思いますが、おいしい良いコメが出来ることを願うばかりです。

5月1日 水稲栽培の座学

 大仙市農業はコメが主体で、ほとんどの研修生も就農後は水稲と並行して研修施設で学んだ野菜や花などの園芸作物に取り組むことになります。

 今年度は研修生の希望があり、月に1回、雨の日の午後に水稲栽培の座学を行っています。テキストは、JA秋田おばこの広報に連載されている農業技術情報と、同じくJA秋田おばこが発行している水稲栽培履歴管理カレンダー。   

 座学では「コメの反収(10アール当たりの収量)は、7俵の人もいれば10俵の人もいるが、かかる経費はほぼ同じ。みなさんは9俵前後をめざして欲しい」と始まり、田植え前の耕起や代かきについて

  • 稲刈りの際コンバインで刻まれた稲わらは、田んぼで腐れば肥料になるが腐らないと有害ガス発生源となる
  • 稲わらが腐るためには、田んぼが乾いていることが条件。稲刈り後に田んぼを乾かせるためには、春の耕起や代かきも重要なポイント
  • 田んぼの耕起は、なるべく深く起こし、土をほぐす感覚で細かすぎないこと。代かきは浅水で行うこと

など、土づくりがとても大切であることの説明がありました。

雨の日の午後に室内で行われている、水稲栽培についての座学風景
JA秋田おばこの広報誌やカレンダーを机に広げ、真剣に講義を聞く研修生たち
講師の話に耳を傾け、手元の水稲栽培履歴管理カレンダーを確認する研修生の様子
ホワイトボードの前に立ち、水稲栽培のテキストを使って説明する講師

5月8日 トマト定植

 4月8日にJA秋田おばこの育苗センターから取り寄せた幼いトマト苗をポットに移植して育苗してきました。

育苗センターから届いた小さなトマトの苗を、一つずつビニールポットへ移植する作業
ビニールポットに並べられた青々としたトマトの苗に、じょうろで丁寧に水をかけている様子

 1か月過ぎて茎長が25センチほどとなり、ハウスのほ場に定植。

 トマトは、ハウスや養液土耕栽培システム等を導入する初期投資が多額ですが、ハウスで栽培することにより天候の影響を受けにくく、収量や品質をコントロールしやすいことと、7月から10月まで長期にわたって収穫できることから、収益を得やすい作物の一つです。

 トマト担当の研修生は、これから成長に応じて「わき芽かき」(葉の付け根から生えるわき芽は放置すると栄養が分散してしまう)、「下葉かき」(一番下の実より下にある葉を除くと風通しが良くなり病気予防になる)などの作業を長期に行い、トマトの収量確保につとめていきます。

ビニールハウス内に等間隔で立てられた、トマト栽培用のまっすぐな支柱
約25センチまで成長したトマトの苗を、ハウス内のほ場に定植する研修生
養液土耕栽培システムが導入されたハウス内で、トマトの定植作業を進める様子
約25センチまで成長したトマトの苗を、ハウス内のほ場に定植する研修生

5月11日 先輩農家に聞く

 アスパラガスは、定植して2年は株を養成し、3年目からの収穫となりますが、一度植えると10年以上収穫が可能で、しかも安定的に高単価で出荷できるため、アスパラも収益を得やすい作物です。アスパラは、長年露地で栽培されてきましたが、雨の跳ね上がりで土壌の菌が茎に付着し、株全体を枯死させる「茎枯病」が多発するようになり、近年はハウス栽培に移行されつつあります。

 この日は、露地でアスパラを栽培している研修修了生を訪問し、露地アスパラの栽培管理について教えてもらいました。

 修了生は、ハウスの屋根にビニールではなく寒冷紗を張り、アスパラに直接雨が当たらようにする、ほ場では雨が株に跳ね上がらないよう畝間を深めに掘って防草シートを敷くなどの工夫をして、病気を防いでいるとのこと。

 東部研修施設では、ハウスでアスパラの高畝と平畝の2種類の栽培を行っていますが、露地栽培は行っておりません。研修施設でできないことは、こうして先輩農家から研修の補完をしてもらっています。

寒冷紗が張られた先輩農家のアスパラガスほ場を見学する様子
畝間を深めに掘って防草シートを敷くなど、病気対策の工夫が施されたほ場での聞き取り
アスパラガスを露地栽培している研修修了生の先輩から、管理方法について説明を受ける研修生たち
アスパラガスを露地栽培している研修修了生の先輩から、管理方法について説明を受ける研修生たち

5月20日 サツマイモ植え

 先月、保育園の子どもたちが西部研修施設で研修生と一緒にジャガイモを植えました。この時、4月に研修施設へ異動してきた若い職員が「えっ、ジャガイモってジャガイモを植えるんですか!?」と言うので、「そうだよ、サトイモもサトイモの種芋を植えるよ。何を植えると思っていたの」と聞いたら「ジャガイモの種を植えると思っていました」とのこと。そうか!ジャガイモは花が咲くので種ができるのか、と筆者はジャガイモの種に初めて気が付きました(^^;)

先月の振り返り)保育園児と一緒に植えた、芽の出たジャガイモの種芋
園児たちにジャガイモの種芋の植え方を優しく教えている指導員

さて、サツマイモもイモを植えるの?いえいえ、サツマイモは種芋から伸びる芽(ツル)が苗となります。

子どもたちはマルチに開けられた穴の中に苗を寝かせて土をかけ、「おおきくなぁれ」の言葉にパワーをもらったサツマイモは、どんどん成長してくれることと思います。

サツマイモ植えの始まりに、畑で向かい合って挨拶を交わす研修生と保育園児たち
「大きくなぁれ」と声をかけながら、みんなで畑に向かってパワーを送る様子
黒いマルチシートの穴にサツマイモのツル苗をどう寝かせるか、園児に手本を見せる研修生
研修生に見守られながら、小さな手でサツマイモの苗を一生懸命土に植える園児

5月22日 ラナンキュラスの球根堀りあげ

 ラナンキュラスは、コロンと丸く、幾重にも花びらが重なったかわいらしい花です。秋に球根を定植し、冬期間は加温(暖房をいれて)して栽培管理を行い、2月下旬から4月ごろまで出荷する、春を代表する花でもあります。

収穫期にハウス内で綺麗に咲き誇っていた、幾重にも花びらが重なった丸いラナンキュラスの花
ピンクや黄色など、鮮やかに色づいたラナンキュラスの花々

 東部研修施設のラナンキュラスの収穫が終わって3週間ほど。茎と葉だけの状態にして球根に栄養分を蓄えたので、西部の研修生からも手伝いをもらい、球根を堀りあげました。この球根は水洗いして予冷庫に保存し、今年秋に再び定植します。 

 片付いたラナンキュラスのハウスには、数日後に小玉スイカを定植しました。

西部研修施設からの応援を受け、大人数で一斉にラナンキュラスの球根を掘り上げる作業
土の中から次々とラナンキュラスの球根を掘り起こしていく研修生たちの様子
秋の再定植に向けて、茎や葉が片付けられたハウスの土から球根を丁寧に掘り出す作業
掘り上げられた、特徴的な形をしたラナンキュラスの球根のアップ

5月26日、27日 サポートチーム巡回

 新規就農するにあたり、国の農業次世代人材投資事業を活用している方々を、県および市、農業委員会、JA等の関係者で構成するサポートチームで巡回し、経営状況の把握や栽培技術の課題に対する指導などを行っています。

 今回は、令和3年以降に就農した12組(うち、当研修施設の修了生は9組)の新規就農者を訪問。

 昨年は酷暑のため栽培管理にとても苦労した、春先の強風の影響を受けて生育が思わしくない、今年度ハウスを増棟する計画であったが3年前と同じ仕様のハウスが100万円値上がりし見送ることにした等、新規就農者から報告があり、全員が、真剣に自分の農業に向き合っていることを確認しました。

春先の強風や昨年の酷暑による影響など、直面している課題について真剣に話し合う様子
県や市、JAなどの関係者で構成されたサポートチームが、新規就農者のハウスを訪問している様子
新規就農者のほ場を巡回
ハウス内で育つ作物の状態を見ながら、栽培技術の課題について専門家から指導を受ける就農者
就農3年目の先輩のほ場で、現在の経営状況や生育状況についてヒアリングを行う巡回班
資材高騰などの課題を抱えつつも、自身の農業に真剣に向き合う就農者から聞き取りを行う様子
資材高騰などの課題を抱えつつも、自身の農業に真剣に向き合う就農者から聞き取りを行う様子
地域で自立して農業を営む新規就農者のほ場を、関係者一同で丁寧に巡回・指導している風景

令和8年度4月の研修活動報告はこちら