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千年先まで伝えたい 空如の法隆寺金堂壁画模写

鈴木空如(1873~1946年)は太田町小神成生まれの仏画家です。生涯で三度、12面ある法隆寺金堂壁画を原寸大で模写しています。昭和24年に法隆寺金堂が火災に見舞われる前にこの偉業が成し遂げられていたことから、模写絵の価値は金堂壁画焼損後に広く知られるようになりました。
12面ずつ3組ある空如の金堂壁画模写絵のうち、1作目と3作目が現在大仙市に所蔵されています。
空如の金堂壁画模写はサイズが大きいことや、日本画のため湿度や温度管理が大変なことから、展示の時期を選んだり、展示作業が困難だったりすることから、数年に一度の公開となっていました。
空如を地域の偉人として顕彰しようと、太田には「鈴木空如を顕彰する会(髙貝久遠会長)」があります。
顕彰する会では、地域住民や子ども達に空如の作品により多く触れてもらい、空如の偉業を千年先に伝えたいという強い想いがありました。
そこで顕彰する会では、令和2年3月から5月にかけ、クラウドファンディングを活用して資金を募り、原寸大の高精細複製画作成に取り組みました。コロナ禍の中、インターネット上でいろんな活動を支援できるとあり、現在では大仙市内でも様々な団体でクラウドファンディングに取り組んでいますが、市内の市民団体で初めてクラウドファンディングに取り組んだのは「鈴木空如を顕彰する会」ではないかと思います。
クラウドファンディングには、太田地域内外の89名・4社・1団体から、目標額を上回る128万円のご支援をいただきました。
これを資金とし、大仙市が保有する模写絵の写真データを使用して、高精細複製画を原寸大で4面、9分の1サイズの額装を14点、展示パネルを1点を制作しました。

このうち原寸大の高精細複製画は太田文化プラザに常設展示しています。
空如の命日にあたる7月21日に除幕式が行われ、顕彰する会の髙貝会長を始め、老松大仙市長、空如の生家である鈴木家の当主・鈴木覚さんなど関係者約30名が参加し、お披露目が行われました。

 

髙貝会長は、「全国には第一級の画人がいるが、亡くなった後もその画人の功績を讃える顕彰会があるのは空如のみと評価されている。子ども達に空如の業績やその生き方を紹介し、努力することの大切さや、自分の才能を地域のために尽くすことの尊さ、そして時代に流されない豊かな心と強さを学んでもらえるよう、今後も空如の顕彰に努めていきたい」と挨拶されました。

 

来賓として出席した老松大仙市長は「大仙市では、芸術・文化などをテーマとした活性化基本構想の策定を予定しており、空如とその作品は、その構想の核の一つとなるものと考えている。地域の盛り上がりがあればこそ、魅力発信ができると思う。今後も大仙市へのご協力をお願いしたい」と祝辞を述べました。

 

そして、空如の生家・鈴木家当主の鈴木覚さんは顕彰する会や支援をしてくださった方へお礼を述べながら「空如には二つの信念があった。展覧会に作品を出さず、名利を求めなかったこと。もう一つは、新聞を読まないこと。世間の変化に惑わされずに仏画を描いた」と空如の生き様をお話ししてくださいました。

 

除幕式終了後には、太田公民館の髙橋副主幹による空如作品の解説があり、参加者は興味深く聞き入っていました。ミニ展示室には空如が東京美術学校(現東京芸術大学)時代に描いた作品なども展示されており、空如の几帳面さや画力の高さなど、広い視点からの解説がありました。

 

除幕式に参加した羽後町の女性に感想を伺うと「空如の作品が、時をこえてここに再現されたと思うと、身震いがする思いです。もともと私は太田の出身で、空如と遠い親戚にあたることからクラウドファンディングに参加しました。亡き父も、このような機会があればぜひ協力するだろうと思ったので、参加させてもらいました」と語ってくださいました。なるほど、「時をこえて再現」とは、また深い言葉です。
空如が、1作目の金堂壁画の模写を完成させたのは大正11年、模写を始めたのは少なくとも今から100年以上前のことです。100年ほど前の空如の偉業を、現代の高精細複製という技術と、クラウドファンディングという情報世界の中で生まれたシステムを用いて、千年先まで伝えていく、この意義はすごく深いと思います。

 

また、時を同じくして、空如の命日7月21日には、東京国立博物館に展示用として貸出されていた空如の作品が、博物館を旅立ち一路大仙市へと向かっていました。金堂壁画模写1・3作目の1・6・10号大壁(6点)のほか、下絵8点の計14点等が、22日に収蔵庫のある太田文化プラザへと戻ってきました。高精細複製画が見守る中で空如直筆の1作目と3作目が無事にお里帰りしました。これもまた、意義深い!丁重に運搬され、その後は一面ずつ博物館の学芸研究部保存修復課保存修復室の瀬谷室長による確認作業が行われました。

 

「鈴木空如を顕彰する会」の皆さん、この度は高精細複製画作成プロジェクトの成功おめでとうございます。
空如の功績を千年先まで伝える「顕彰する会」の活動を応援したい方は、太田文化プラザに足を運び、常設展示の複製画をぜひご覧ください。空如による焼損前の忠実な模写絵があるおかげで、現代の私たちはここ太田にいながら、奈良の法隆寺にあった飛鳥時代の壁画を間近で鑑賞することができます。空如作品のサイズ感や緻密さをご堪能いただき、お友達やお知り合いにぜひとも宣伝をお願いします。地域みんなで千年先まで伝えていきましょう!