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2年ぶりの開催 太田地域文化講演会

11月2日(水)、太田地域自治組織連絡協議会(伊藤洋一会長)と大仙市の共催により、太田地域文化講演会が開催されました。
この講演会は毎年、太田地域に縁のある方を講師にお招きし、ふるさと太田の良さを見つめ直すきっかけづくりと、地域住民の教養と文化意識の高揚を目的に開催しているものです。
昨年度は新型コロナウイルスの影響で中止となってしまいましたが、2年ぶりとなる今回は太田中学校体育館を会場に、太田中学校の生徒や山登り教室修了者、地域の皆さんなど約200名の参加のもと行われました。

今年の講師は、登山家・フォトグラファーの小松由佳さん。
小松さんは秋田市生まれですが、お父さんが太田地域のご出身、おばあさんが太田地域に在住されています。
東海大学山岳部で本格的な登山を学び、2006年にパキスタンと中国国境にまたがる世界第二の高峰・K2に日本人女性で初めて登頂し、「秋田県県民栄誉章」を受章されています。
近年では、風土に根差した人間の営みに惹かれ、草原や砂漠を旅しながらフォトグラファーに転向、2012年からはシリア内戦、難民を取材されています。

ここ太田地域にも、大仙市が誇る真木真昼県立自然公園の豊かな自然があります。
市では令和2年度から3年間の計画で、県・美郷町と連携して地方創生交付金を活用し、このエリアの魅力や知名度アップを図る事業を行ってきました。ガイドマップの作成や登山関係の様々なイベントの開催、そして楽しみながら登山の知識や技術を学ぶ「山登り教室」の開催もその一つです。
そして事業の最終年度となる今年度、地域の皆さんや若い世代にも太田地域の豊かな自然の魅力を見つめ直すきっかけになればと、登山経験が豊富で世界的に活躍されている小松さんに講師をお願いしました。

開会にあたり、主催者を代表して大仙市の今野功成 副市長から「小松さん自身や登山の話はもちろん、フォトグラファーとして海外で取材を行っている貴重な体験をお聞きしたい。この講演会をきっかけに太田地域がますます活気ある地域になってほしい」と挨拶がありました。演題は「見えない山を登り続ける~K2から砂漠へ、難民の土地へ~」。

冒頭はK2登山についての経験を話してくれました。
小松さんが登頂に成功したK2の標高は8,611mと、富士山のなんと2倍以上。世界一標高が高い山といえば8,848mのエベレストというのは皆さんご存じだと思いますが、2番目であるK2が「世界一困難な山」と呼ばれ、登山者の4人に1人は命を落としているとも言われているほどです。

小松さんはまず、「同じ山はない」と言います。それは当日の天気だったり、一緒に登る仲間だったり、季節によって山は変わるからです。ヒマラヤの山々に憧れて東海大学の山岳部に入部した小松さんは、そこで登山漬けの生活を送ります。
登山の魅力は「生きている実感」だということですが、やはり女性であるため「体力的な区別」があったといいます。しかし山の方では登る人を男性か女性かで区別することはありません。「これは本当の『壁』か、人が作った『壁』か」と考えるようになったそうです。
エベレスト登山に参加した時は、高山病のため途中で断念。挫折の中帰国した小松さんは、「山頂に立つことだけが大事ではない。その過程がなかったから失敗した」と後悔しました。それからは過程を大事にし、「何のため登るのか」と考えるようになったとのこと。

そして、小松さんにK2に登るチャンスが訪れましたが、自分の実力が通用するのか悩んだといいます。しかしチャンスは「自ら作り出すもの」と「偶然与えられるもの」があり、後者は二度とめぐってこないかもしれないと考え、参加を決意したそうです。
小松さんは実際にK2登頂の時に使った登山道具を持って来て説明してくれました。これらの道具は非常に高価ですが妥協はしないとのこと。

また、「ユキちゃん」の話もしてくれました。ユキちゃんは登山の際に連れていった生きたヤギですが、当然ペットではありません。現地でさばいて食料にするためです。「かわいそう」と思うかもしれませんが、こうして「生命のサイクル」を知り、感じるのだといいます。

8,611mの頂からみた世界は地球が丸いことを実感し、宇宙に近いせいか「空が黒かった」とのこと。
その帰り、死と隣り合わせのビバークで、小松さんは「命を感じることができた」と言います。
「ビバーク」とは、予定通り下山できず山中で緊急に夜を明かすことです。
こうして思ったのは「人間は小さな存在だ」ということ。無事に登頂できたのは、努力や経験だけではどうすることもできない大きな自然の流れによるもの。そうした存在に、「人は生かされている」と感じたそうです。

このような経験を通して、小松さんの興味は山そのものではなく、そのような厳しい自然の中で生きる人々へと移っていきました。それがフォトグラファーへの転身のきっかけとなったそうです。それからはシリアでのことについてお話しくださいました。
シリアの内戦と難民の撮影を続けた小松さんは、砂漠で半遊牧生活を送っていたとある70人近い大家族と出会い、深く関わっていきます。
シリア人は「幸せな人生とはゆとりを持つこと」「一番大切なものは家族」という人が多いそうです。その一家もたくさんの仕事をかけもち、ゆったりと働いて暮らしていました。

そんな一家も内戦で家族がバラバラになり、難民になってしまいます。
小松さんの夫もシリア難民です。今は日本で生活していますが、働くことに関する価値観の違いや、イスラム教徒に対する偏見や食べ物の制限など、とまどうことはたくさんあるそうです。しかし小松さんは「完全な理解はできない」ことを理解し、価値観が違っても一緒にいることはできると考えるようにしたそうです。

現在は現実の山ではなく「見えない山」を目指して挑戦を続けている小松さん。山から教わったメッセージとして、チャンスはいつ降ってくるかわからないので、つかむ準備をしなければならないということや、目の前の小さなステップの積み重ねが大きな挑戦につながるということをお話し、講演をしめくくりました。

終了後、参加者から様々な質問がありました。

Q 今、登りたい山はどこですか?
A 鳥海山など故郷の山に登りたいです。
Q なぜ登山を始めようと思ったんですか?
A いつも見ている山の裏側が見てみたかったからです。
Q 登山中は何を考えて登っていますか?
A 辛いことばかりですが、とにかく登ることに集中しています。
Q 難民の取材で大変なことや不便なことは何ですか?
A 電気や水道などのインフラが不安定なこと。イスラムの生活習慣や服装なども慣れないと大変です。
Q 中学生のうちにやっておいた方が良いと思うのは何ですか?
A 卒業すると進学などでバラバラになってしまうので、今しかできないことをして仲間との絆を深めてほしいです。

素人には想像もできないような努力をし、貴重な経験を語ってくださった小松さんに、質問が殺到しました。
小松さんのお話を通して、参加者の皆さんもふるさと太田の魅力を再認識できる機会になったのではないでしょうか。

小松さん、中学生にも大人にも響く講演をありがとうございました。小松さんの更なる挑戦が達成されることをお祈りしております!

おかげさまで5年目! 太田分校レストラン

晴天に恵まれた令和4年10月25日(火)、中里温泉レストランを会場に「太田分校レストラン」が開催されました!

「太田分校レストラン」の開催は今年で5年目。大曲農業高校太田分校の生徒が考案したメニューを、中里温泉レストランで調理し提供するもので、価格は1個850円。新型コロナウイルス感染防止のため、昨年度に引き続き「テイクアウト方式」でのお弁当販売となりました。

太田分校の情報教養コース3年生7人の生徒が考案した今年のメニューは「豚バラの竜田揚げ」「鶏肉とカボチャの旨煮」「甘鯛の西京焼き」など8品、そしてご飯は太田分校の特別栽培米。これは無農薬・無化学肥料栽培!!全校生徒で草取りをしたり、農業コースの生徒たちが昔ながらの手押し除草機で除草したりと大切に育てたお米で、秋田県の特別栽培米認証を受けている大変美味しいご飯です。また、お弁当のメニューカードや箸袋、プレゼントの小物も生徒たちの手作りです。

当日、朝早くから生徒達はオープンに向けて、調理の補助、お弁当の盛りつけ、店内の清掃などの仕事をしました。

そして接客の手順についても教えていただき、ついにオープン!!

生徒は2人1班となりローテーションでお客さんにお弁当を渡しました。たくさん買ってくださったお客さんには、車まで持っていくなど、緊張しながらもしっかりとした「接客」です。「毎年、楽しみにしているよ」と声を掛けてくれた女性がうれしそうにお弁当を持って行くのを見て、見守る立場の私たちまでうれしくなりました。

また玄関では太田分校で収穫された「里芋」「ネギ」そして「特別栽培米」、また大農本校の生徒たちが作った「ジャム」「ぶどう液」そして「みそ」が販売され、こちらも人気のようでした。

当日は通常どおりレストランも開店しているため、店内で食事されるお客さんへの配膳や片付けも行いました。お水を持っていったり、料理を持っていったりと、見ているこちらが少しドキドキしましたが、ミスのない仕事でした。

午後1時過ぎ、予定していたお弁当が完売。無事、令和4年度の「太田分校レストラン」が終了。

参加した生徒、津島杏輔さんにインタビューしてみました。
Q 今日の感想を教えてください。
A 接客は初めてでしたが、中里温泉のスタッフに色々教えてもらって、丁寧にできたと思います。
Q 準備も含めて、大変だったことは何ですか?
A メニューカードやプレゼントを作るのが、慣れていないので難しかったです。
Q うれしかったことは何ですか?
A お弁当販売だけでなく、レストランの配膳や片付けをさせてもらいましたが、お客さんから「おいしかった」や「ありがとう」と言ってもらったのがうれしかったです。

太田分校の生徒の皆さん、お疲れ様でした。地域にとっても皆さんにとっても素敵な1日になったのではないでしょうか?太田分校生のますますの活躍、そしてさらなる飛躍に期待しています!!!!!